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波の子 第一話 波の能力者

 ひっさびさの更新になります。そのうちなろうにも上げるかも。


<本編>
 ある時、突如として『能力』を持った人間が誕生した。
 炎を発生させる能力、氷を生み出す能力など、ある日を境にごく一部の人間がそういった『能力』を持って生まれてくることとなった。
 以降、戦争のない平和な時代が訪れることとなった。その理由は、いくつかある。極めて強大な能力は、兵器による武力を無力化できてしまうこと。各国が強力な能力者による機密部隊を持ったことで、兵器による戦争が無意味と化したこと。どの国も相手の戦力が知れず、互いに手出しができない状態となったこと。能力によっては、相手のトップの首を容易く落とすことができてしまうこと、などなど。
 よって、どの国も強力な能力者を求め、独自の政策を取るようになった。それは、日本も例外ではない。


 日本能力開発高校。能力者なら、だれもが入学することのできる高校だ。
 一般的な高校と同じ内容を教えるが、能力を将来の職にどのように活かすかを教員が一緒に考え、手厚い就職サポートを行ってくれるため、能力者にとっては普通の高校に通うよりはこの高校に通った方が将来安泰するだろう。そのため、この高校には日本中の能力者が集まることとなる。その中で、極めて優れた能力者を日本の軍事力として引き抜くことが、この高校の真の目的だ。


 そんな高校に俺、渡辺剣也(わたなべ けんや)は入学することになった。
 入学式の会場である体育館へ向かい、自分の席を探す。
 まだ入学式開始まで時間があるからか、生徒はほとんど席にいない。だが、俺が自分の席を見つけた時、その席の隣で小学生くらいの女の子がいた。
 この高校には、飛び級での入学制度が存在すると聞いたことがある。なんとも、あらかじめ国から優れた能力者だと認められれば、中学を卒業しなくてもこの高校に入れるのだそうな。この子も、おそらく飛び級で入学する子なのだろう。
 その子の席の隣には、俺と同じくらいの年の女子がいて、その小学生くらいの子としゃべっている。
 俺は自分の席に座った。コミュ障だから、できれば俺にも話かけてほしいなと思ったが、声を掛けられることはなかった。
 ……もしかすると俺、こんな感じで誰にも話し掛けられず、ぼっちになるんじゃないだろうか? 俺は能力も地味で、目立たなそうだし。……なんか、まだ入学式なのに今後の高校生活が不安になってきた。


 しばらく2人の話を横から聞きながら、俺はぼーっとしていた。やはり、隣の小学生くらいの女の子は見た目通りの年齢で、9歳なのに飛び級で入学できたみたいだ。
「飛び級ってことは、リョウちゃん、めちゃくちゃすごい能力を持ってるってことだよね!?」
 俺と同じくらいの年の女の子は、リョウちゃんと呼ばれた小学生くらいの女の子にそう聞いた。
 しかし、そのリョウちゃんという女の子が言うには、
「それがですね……、私の能力は『波を操る能力』なんですよね。そんなにすごくないんです」
「えぇ!? 意外!! ……って言ったら、失礼だよね、ゴメンね。かく言う私も、自分の意志で能力を発動できないし、落ちこぼれ能力者だけどね。『想像を現実にする能力』なんだけど」
「えっと、能力の名前だけ聞くと、とてもすごそうな能力に聞こえるのですが、違うんですか?」
「やっぱりそう思うよね。でも、実際はこの能力、滅多に発動してくれなくて、自分でも困ってるんだ。本当に滅多に発動しないから、そもそも能力者を名乗っていいのかどうか」
「さすがに名乗っていいと思いますけど、そんな能力もあるんですね。お互い大変だとは思いますが、周りに流されずに頑張っていきましょう!」
 そう言って、励ますリョウちゃんという女の子。
 この女の子が、不安しかない俺の高校生活を劇的なものにするとは、この時は思ってもいなかった。


――入学式が終わり、俺は自分の教室である1年A組の教室に入った。
 席順は男女混合のあいうえお順。俺は苗字が「わ」で始まるから一番奥の席かと思ったが、そうではなくその1個手前らしい。入学式の時に隣にいた、リョウちゃんという女の子が一番奥の席らしい。
 座席表で名前を確認すると、和田量子(わだりょうこ)という名前らしい。量子だから量ちゃん、か。
 なんというか……、他意はないんだけど、名前の字面がそれっぽくて、髪型が長髪パッツンだから、座敷童がイメージとして浮かんできた。怖く暗い感じじゃなくて、普通にかわいくて明るい子なんだけど。
 自分の席についてしばらくすると、先生が来た。『入学のしおり』と書かれた書類を配り、説明を始める。この高校の歴史とか教訓的な内容とか、各種手続きとかいろいろ、頭がこんがらがる説明ばかり。
 一通り説明を終えると、
「それでは、少し疲れたでしょうし長めに休憩を取ります。周りには全国から集まった生徒たちがいて、中学までの知り合いなんていないでしょう。休憩時間中に周りの子たちと自己紹介でもして、顔なじみになっておいてください。では」
 そう言って、先生は退室した。


 クラス中で話し声が聞こえるが、あいにく俺はコミュ障だ。自分から声を掛けられないでいる。
 すると、
「あ、あの、剣也さん!」
 後ろの、量ちゃんという子から声を掛けられた。ネクラな俺にわざわざ話掛けるのかと思ったが、そもそも俺以外に話せる相手がいないのだ。
 この子は一番後ろの席。そして、この列だけ1席多くなっているため、この子の隣には誰もいない。だから、俺に声を掛けるしかなくなる。
 俺は誰とも話せないでいる最中、この状況に救われたのだ。
「えっと、量ちゃん、だっけ?」
 どう呼べばいいか分からなかったから、入学式の前に聞いた呼び名で、その子の名前を呼んだ。さすがに初対面であだ名はマズかったかな?
 でも、この子も俺のことを苗字じゃなく、下の名前で呼んでるから、まぁいいか。初対面で下の名前で呼び合うのは違和感があるけども。
「はい、和田量子こと、量ちゃんです! 小学生の頃、みんなから呼ばれていたあだ名なので、剣也さんも、良かったらそう呼んで下さい」
 小学生の子が『小学生の頃』って言ってるの、すごい違和感あるな。さっき、入学式前に盗み聞きしてた話によると、この子9歳だろ? 去年まで、小学3年生だったってことだよな。
 周りを見ても、小学生っぽいのはこの子だけ。あとは全員、見た感じは俺と同い年に見える。
 量ちゃんが話を続ける。
「さっき、会田(あいだ)さんとの話を聞かれてたかもしれませんが……」
 会田という子は、入学式前に量ちゃんが話していた女子のことだろう。さっきの入学式でもあいうえお順に並んでいたようで、おそらくその会田という子は隣のクラスだ。
「私の能力は、『波を操る能力』です。……ちょっとお見せしますね」
 そう言うと、量ちゃんは水筒のカップに水を注ぎ、そのカップの水面に指をつけた。
 指を入れたことにより、水面に波紋が広がる。その波はすぐに消えるが、
「いきますね」
 量ちゃんがそう言うと、その指から小さな波紋が、等間隔で生み出されていった。何秒経っても、その波紋は生成され続ける。なお、量ちゃんは水面で指を動かしたりしてはいない。
「この能力は、自由にどんな波も生み出したり、また生み出した波やすでにある波を自由に制御したりできます」
「制御ってのがよく分からないけど、要は今見せてもらったように、自由に波を生み出すことができる能力ってことか?」
「はい、だいたいそれで合っています!」
 量ちゃんは言った。ただ、続けて、
「もう少し正確に言いますと、波のパラメータを制御する能力になります。波には振幅、周波数、位相、速度、波長といったようなパラメータがありまして、私の能力はそういった波のパラメータを制御する能力になります。例えば、先ほどは水面に全く波が立っていない状態でしたが、言い換えれば水面には振幅ゼロの波が立っていたわけです。その振幅を私の能力で制御し、カップの水を波立たせた、ということなのです」
 ……やべぇ、何を言っているのか全然わからん。
 こういう文字の羅列を見ると、よく『めっちゃ早口で言ってそう』と思われるかもしれない。
 しかし、この子は普通の話す速さでしゃべっている。……内容理解できないから、早口で言ってほしかった。
 なんとなく、波を作りだすことはできるけど、それだけじゃないってことなのだろう。……うん、わかんないが、多分そういう意図だ。
「なるほど、お前の能力って、すごく奥が深いんだな」
 とりあえず、無難にこう答えておいた。
 すると、量ちゃんは目を輝かせて言う。
「はい! ついウンチクを語ってしまいましたが、ちゃんと聞いていただけていたのですね! とても嬉しいです!」
 良心が痛む。
 
 
「ところで、剣也さんの能力はどんな能力なのか、聞いてもいいですか?」
 量ちゃんが言った。特に俺の能力を隠す必要もないので、話すことにする。
「ああ。俺の能力は、『周囲を照らす能力』だ。使うとこんな感じで、少し明るくなる」
 俺は能力を使って見せた。俺が両手で覆った空間から、光がこぼれている。
「今、周囲をこの能力で照らすと目立つから両手の中に収めているが、俺の周囲ならどこでも、まぁまぁの明るさで照らすことができる」
「そういう能力でしたか。なんというか、変わった能力ですね」
「あぁ。しょぼい能力だ」
「えっ?」
 量ちゃんはキョトンとして言った。
「えっ?」
 なんで『えっ?』と言われたのかよくわからず、俺も同じ反応をしてしまった。
 量ちゃんが言うには、
「私はしょぼい能力だとは思いません。一般的に能力者が持っている能力は、何かと攻撃に使える能力が多いじゃないですか」
 実は、そうなのだ。生存本能が影響していると言われているが、能力者は大抵、相手を攻撃するための能力を持っていることが多い。
「でも、剣也さんは暗い場所を照らしたり、何かと実用的な能力をお持ちなので、変わった能力だなと思ったのです。しょぼいとは思いませんし、むしろ個性あふれる魅力的な能力だと思います!」
 ……この子、9歳のはずだけど、結構気が利くな。中学の友達からも、そんな言葉聞かなかったぞ? みんな、『能力というには、……なんかしょぼくない?』って感じの反応ばかりだったというのに。
「ありがとな。でも、すごいのは量ちゃんの方なんじゃないか? 9歳なのに飛び級で入学できたんだろ? 波を生み出す能力なら、もっと何かすごいことできそうだし、実際何かがすごいから飛び級できたんだろ?」
 あれ? 波を操る能力だっけ? 言い間違えたからか、量ちゃんが苦笑してる。ごめん。
 ただ、俺の問いに対し、量ちゃんは何か言いにくそうにしている。目線をそらし、言葉を選んでいるようだ。
 少し間を置き、量ちゃんは笑顔でこう言う。
「実は私、小学校でいじめにあっていたんですよ。物理学が好きで、大学とかで有名な量子力学の教科書を、小学校に持って読むようなガリ勉だったからか、目を付けられちゃって。それで色々あって、小学校に居づらくなった背景があるので、多分そういう理由で飛び級を認めてもらえたのだと思います」
 軽い口調ですごい重いことを、急にカミングアウトしたなコイツ。反応に困るわ。
「そうだったのか。……悪いこと聞いたな。すまん」
 こういう反応が無難か? もう口に出しちゃったし、マズい反応してても知らん。
 というか、コイツ大学の内容を小学校で勉強してたの? さっきの波のパラメータが云々といった説明も聞いててよくわかんなかったけど、めちゃくちゃ頭いいのでは?
 量ちゃんはまた言葉に困った様子。マジかよ、自分でカミングアウトしたんだろお前。俺もコミュ障なんだから、言葉に困らないでくれ。
「あぁ……っと、実は俺も小中といじめられててな。そんなに執拗な感じじゃなかったけど、つらいよな、いじめって」
 厳密に言うと、いじめではなく単にいじられていただけだが。俺はいじられるのがあまり好きじゃないから、それなりに辛かったのは本当だ。
「そうですね。共感してくれて、ありがとうございます。私たち、結構似た者同士なのかもしれませんね?」
 やっと、量ちゃんが口を開いた。
 ……似てるか? 俺はそうは思わんが。
「……かもな」
 とりあえず、無難にそう答えておいた。
 
 
 その日は授業もなく、いろいろと面倒な説明だけされて、下校することになった。
 他に仲良くなったやつもいないので、俺は量ちゃんと帰ることにした。
 この高校は好きなカバンで通学できるのだが、量ちゃんは赤いランドセルを背負っている。ランドセルって結構圧迫感ある気がするんだけど、煩わしくないのかなぁ。


 俺たちが校門を出ようとした、その時だった。
「そこのネクラとガキ、ちょっと待ちな」
 後ろから声がした。
 明らかな暴言だったが、間違いなく俺たちのことだろうと思い、振り向いた。
 そこにいたのは、ガラが悪そうな3人の女子。うち1人は、たしか伊賀野麻耶(いがのまや)だったか。やたら目つきの怖い女子だったから、名前覚えちゃったんだよな。
 他の2人は、伊賀野の周りの席にいたやつらで、今日伊賀野と結構話してたやつらだ。
 伊賀野は言う。
「勝手な話で悪いが、アタシらと能力勝負してくんないかなぁ?」
 能力勝負とは、簡単に言うと能力を使ったケンカだ。殴り合いの代わりに能力を使い、ルール無用の戦いをし、相手を先頭不能にすれば勝ち。
 ここは能力者の高校だが、能力勝負はただのガチなケンカなので、やっている人は滅多にいない。
「そんな、無理ですよ! 私は波を操る能力で、剣也さんは周囲を照らす能力。とても勝負にはなりません!」
 量ちゃんがそう言うと、伊賀野はにらみ、
「はぁ? そんなの関係ないね。アタシらは野望を抱えててね、強い能力者として名をはせたいんだよ」
「でしたら、私たちのような弱い人じゃなくて、もっと強そうな人に挑んだほうが……」
「強くなるにも、まずは弱いやつから相手にするのが王道だろ? まぁ、どうしても嫌だというなら、そうだな。実は、アタシら喉渇いてるし、小腹も空いてんだけど、持ち合わせがないんだよね。有り金全部くれるってんなら、見逃してやってもいいが」
 初日から、なんてとんでもないやつに目をつけられちまったんだ。
 このままだとマズい! 有り金全部取られるか、ボコられるかの2択だ! いや、ボコられても多分有り金全部取られるから、有り金を奪われるのは確定だ!
 どうする……!? クソ! 体がこわばって動かない! 大ピンチなんだぞ!? 動けよ! 俺の体!!
 そう思っていると、量ちゃんが俺の手を引っ張って、校舎の外へ走り出した。
「とにかく逃げましょう!」
 量ちゃんが言った。そうだ、逃げるしかない! 怖いからって動かずにいるのは、一番マズいことに決まってる。
 俺も全力で走り出すが、後ろから伊賀野たちが追いかけてくる。
「ハッ! 逃がすと思ってんのかよ!?」
 思ってないけど、こっちだって何としても逃げたいんだよ!
「そのまま足の速さで逃げられると思ってんのか? めでたいヤツだな、ここは能力者の高校だぜ?」
 伊賀野が言った。
 その言葉を聞き、何やらハッとなる量ちゃん。するとランドセルから財布を抜き出し、俺に手渡してこう言った。
「ごめんなさい! おそらく伊賀野さんには遠距離で攻撃できる能力があるので、私たち2人とも逃げ切るのは無理です! なので、私の財布を持ってそのまま剣也さんは逃げてもらえませんか!?」
「なっ!? それってどういう……」
 そう俺が言いかけた途端、
「これでも喰らえ! グラスファイア!」
 伊賀野の手から、何かが大量に放たれた。材質はガラスだろうか? キラキラと輝いている。
「アタシの能力は、『おはじきを放出する能力』。おはじきと聞くとダサいが、結構キラキラしててキレイで、イカすだろう? さらに、腐ってもガラスだからな。高速で放たれたコイツは、当たるとタダじゃすまないぜ?」
 初撃は避けれたが、追撃が俺を目掛けて襲ってくる。
 もうダメだと思った、その瞬間。
「がはっ!?」
 量ちゃんが俺の盾になった。
「えっ!? ちょっと、何やって……」
「いいですから! 私の財布を持ってそのまま逃げてください! どうか、私たちのおこづかいを守り抜いて下さい……!」
 俺の言葉を遮り、量ちゃんは言った。俺のは、おこづかいというより生活費になるのだが……、って、それどころじゃない!
 俺は量ちゃんの言う通り、その場から全力で逃げ去ろうとした。か弱い女の子を見捨てるなんて、自分でもどうかしていると思うが、そんなこと冷静に判断できる状態じゃなかった。
「逃げるのかよ? だったら、コイツはどうなってもいいってことだよな? 見てなよ……」
 伊賀野の声がする。俺は一瞬、後ろを振り向いた。
 すると、首根っこを捕まれ、思い切り顔面を殴られる量ちゃんの姿が、俺の目に映った。
 ……くそったれ。入学初日から、なんて悪夢だよ。
 伊賀野たちは、どうやらそのまま追ってくる気配はない。
 俺はそのまま、男子寮まで逃げ切ることができた。


 翌朝。
 ほとんど寝ることができず、食事も喉を通らなかった。昨日のあの悪夢のせいだ。
 ……悪夢であれば、現実でなければどれだけ良いことか。どうか夢であってほしいと思うが、あいにく量ちゃんの財布は俺の手元にある。
 憂鬱な気分で男子寮を出ると、そこに偶然、量ちゃんが歩いていて俺と目を合わせた。
「あっ、剣也さん! おはようございます! 昨日は無事、逃げ切れましたか?」
 量ちゃんが言った。
 量ちゃんは全身怪我だらけだった。昨日、最後に一瞬見た怪我具合よりもひどい。あれから伊賀野たちに痛めつけられたんだろう。
 9歳の女の子をこんなに痛めつけるなんて、なんてひどい奴らなんだ。……いや、ひどいのは俺か。庇ってくれたこの子を見捨てて、1人逃げだしたのだから。
「……ごめん」
 正直、何と口を聞いていいか分からない。開口一言、俺の口から出たのがその言葉だった。ごめんで済めば、警察はいらないだろうに。
 しかし、量ちゃんは笑顔で、
「何のことですか? 剣也さんは、私がお願いした通り、私の財布を守ってくださったのですよね? ……もしかして、財布は守り切れませんでしたか?」
「い、いや、そんなことないよ! ほら、これ!」
 俺は量ちゃんに財布を返した。
「ありがとうございます! ちなみに言っておきますと、怪我こそしてるものの、私は大丈夫ですよ。無駄に頑丈なので」
 そうは言うが、怪我の具合は本当にひどい。素人目に見ても分かる。なぜが量ちゃんはすごく元気だが、仮に俺がこんな怪我をしていたなら、向かうべきは学校じゃなく病院だろう。

 学校に着き、俺たちは教室に入った。
「……なんだよ、これは」
 何か俺の机が汚れてるなと思ってみてみたら、チョークやマジックで罵詈雑言の落書きがされていた。
 『死ね』『臆病者』『人でなし』『女の子すら守れない無能は退学しろ』などなど、……なんだよ、これは。
「やっと来たか、臆病者。その机、カラフルでいいデザインに仕上がってるだろ?」
 伊賀野が近づいてきて、声を掛けた。俺は怖くて身震いする。
 ここは教室。逃げ場などない。
 徐々に伊賀野が距離を詰めてくる。これは……完全に詰んだか。
 そう思った、その時。
「……許せません」
 隣で量ちゃんが言った。
「あぁ?」
 伊賀野の逆鱗に触れ、量ちゃんは首を捕まれ、持ち上げられる。
「てめぇ、昨日はよくも生意気なことをしてくれたな。あれだけ痛い目に遭ったのに、まだ分からないのか? アタシらはガキだからって手加減するような、甘優しい人間じゃな……ぐああぁっ!!」
 突如、伊賀野が苦痛で叫び出した。量ちゃんの指からレーザー光線が放たれ、伊賀野の体から煙が出ている。
「てめぇ、何しやが……ぐああぁっ!!?」
「ぎゃあああぁぁぁ!!!」
 伊賀野の取り巻き2人が量ちゃんに襲いかかろうとするが、同じようにレーザー光線に焼かれる。
「くっ、2人を傷つけるな!! アタシにコイツがあるのを忘れたか!?」
 レーザーの標的から外れ、解放された伊賀野は量ちゃんに手をかざした。
「ゼロ距離からのコイツは痛いぜぇ? グラスファイア!!」
 至近距離から、大量のおはじきが量ちゃんに放たれる。
 しかし、そのおはじきは量ちゃんを貫通し、取り巻き2人に当たる。
「ぐああああぁぁぁ!!!」
「ぎゃあああぁぁぁ!!!」
「なっ!? ……てめぇ、一体何をした!?」
 伊賀野は驚いて言った。量ちゃんは無傷だった。
 よく見ると、昨日受けた怪我もいつの間にか完治している。
 量ちゃんは、指を伊賀野に向けて言う。
「何をしたって、……ただ波を操っただけなのですが」
「ひっ!?」
 おびえる伊賀野。そんな伊賀野に、量ちゃんは容赦なく指を向ける。
「では、お覚悟を。指差光線(フィンガーレーザー)!」
 瞬間、伊賀野の悲鳴が教室中に響き渡った。


 しばらくして、
「みんな、おはよ……」
 教室に入った先生が絶句した。
 黒こげの伊賀野と、焼け跡とおはじきによる怪我で倒れている取り巻き2人。そして、量ちゃんが運んでいる俺の落書きされた机が目に入ったからだ。
 量ちゃんは俺の机を伊賀野の席に置いた後、伊賀野の机をまた俺の席に運び始めた。
「はぁ……」
 先生はため息をついて言った。
「量ちゃんがその能力を隠し通せるとは思っていなかったけど、ひどくやってくれたね。伊賀野さんも、これに懲りたら過激な活動はやめなさいね」
 能力を隠し通せる? つまり、量ちゃんは戦えない能力とか言っておきながら、結構すごい能力を持っていたということか?
 量ちゃんは俺に近づいて言う。
「机が汚なかったので、代わりに伊賀野さんの机を持ってきました。すぐに中身を入れ替えますね」
「あ、ああ……」
 この子は……一体?
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キュリアと謙次 さいしゅうかい!

<前回までのあらすじ>
 自身の予知能力に操られ、暴走し、世界を脅威に晒した謙次。
 予知能力に操られることを恐れ、悩んでいると、予知能力から謙次のやるべきことを提示してきました。
 それは、9年間現代に戻り、難関大学に合格する等の無茶な課題をクリアすることで、予知能力に操られないレベルまで精神を鍛えるというものでした。
 謙次は決意を固め、キュリアをはじめとするさまざまな人に後押しされながら、現代へと帰りました。


<本編>
 しばらく時が経ち、キュリアは心を病みました。
 謙次は頼りない少年ではありましたが、キュリアにとっては過去を忘れさせてくれる、心の支えとなってくれる存在だったのです。
 1年間の謙次と過ごした日々。たった1年とはいえ、キュリアにとってはとても貴重な1年間であり、時が過ぎるごとにその1年間が恋しくなってくるのでした。
 3年を過ぎたあたりで、謙次が戻ってくるまでの年月を考えるのが嫌になり、キュリアは家にある日付を表示することができる道具、つまりカレンダーや時計、テレビなどを全て捨てました。
 あれから、……間違いなく年単位で時間は過ぎているものの、どのくらい経ったのか把握しないようにキュリアは過ごしていました。
 お金を使わず、また収入を得るようなこともせず、たまにやってくる正義の味方を倒すだけの日々。
 マリエル、ガイはキュリアの異常に感づいたようで、可能な限りキュリアの元に遊びに行ったり、バトルしたりして気を紛らわせようとしました。
 そのおかげで、多少なりとも精神を長く保たせることができていたようですが、
「私は、……もう限界だよ」
 キュリアは正義の味方の頭を鷲掴みにし、そう言いました。
 その正義の味方は、カラスに平安時代の服を着せたような姿をした、モンスターでした。
「ま、待て! 参った! マロっち参ったから!! 何をするつもりだ!?」
 通常のバトルでは行わないようなキュリアの奇行に、正義の味方は恐怖を感じているようです。
 キュリアは言います。
「良く考えてみるとさ、あの謙次が予知どおりの無茶な精神の鍛え方をできる保証はどこにもないんだよね。私が謙次に会いたいって想う気持ちを、謙次も同じように持っているとは限らないし」
「お前、一体何を言っているんだ?」
 正義の味方は顔をこわばらせて言いました。
 すると、キュリアは手に黒球を作りました。
 謎の引力を持っており、すごいエネルギーを感じる黒球で、……少なくともその黒球で攻撃されたら死ぬであろうと、正義の味方は瞬時に感じ取りました。
「ま、待て! マロっちモンスターだが人権持ちだぞ! お前は人を殺せるのか!? 冷静になって考えてみろ!!」
 キュリアは人を殺さないという情報を信じ、身の安全を確保した上でワンチャン、キュリアの抹殺を狙おうとやってきた正義の味方。
 しかし、その身の安全が脅かされた今、正義の味方は猛烈に抵抗します。
「お前は悪い人間だが、マロっちは悪くない人間! 殺していい道理などないはずだぞ!」
「……私は悪くない」
 正義の味方の言葉は、逆にキュリアを刺激したようで、
「さよなら……」
 ついに黒球を構えた手をキュリアは動かします。
 ……が、その時、
「いや、このモンスターが悪くないかはさておき、キュリア、お前は悪いぞ」
 突如現れた青年に腕をつかまれ、キュリアは攻撃を阻止されました。
「何せ、過去100人近くの罪の無い人を殺めた『ジェノサイド』なんだからな」
 長年聞いていなかった、懐かしい声。
 その声の聞こえる方向を振り向くや否や、キュリアはうれし涙をこぼして言いました。
「謙次!!!」
 感情があまって、思い切り謙次に飛びつくキュリア。
 それをしっかりと、謙次は受け止めます。
(作者:常人には耐えられない強い飛びつきでしたが、謙次はそれに耐えました。……ということは、謙次の予知能力を制御できる程度に、メンタルが鍛えられていることを意味します)
 え? どういうこと?
(作者:キュリアのこの飛びつきに耐えるには、①魔力を使う、②強化魔法を制御しキュリアの飛びつきに耐えうるよう肉体を強化する、という2つの条件が必須です。謙次の持つ魔力は、極めて微弱なもの。それを増強し、かつ強化魔法が使えたのは、謙次の予知能力を制御できているからに他なりません)
 ……まだ分からない。予知能力が使えれば、魔力も増強されて、強化魔法も使えるのか?
(作者:適切に制御されれば、の話ですけどね。フェニックスとの大戦の時、謙次が魔法を使えていた理由は、①予知能力が謙次を操り、『ミステリアスオーラ』という魔力増強魔法を発動させ、膨大な魔力を生成できたため、②予知能力が謙次を操ることで、どんな魔法でも使うことができたためです。予知能力は暴走した未来の謙次を予知することで、どんな魔法でも『未来予知』という情報伝達手段で謙次に魔法を使わせることができるのです)
 ……なんとなく分かった。その未来予知で謙次に魔法を使わせると、メン弱な謙次だったら身体をのっとられて暴走する。でも、メンタルが鍛えられた今の謙次は、暴走しないように制御しつつ、かつどんな魔法でも使える、ということか!?
(作者:そういうこと)
 何ということだ!? ヘタレゴミな主人公設定が最終回で一気に崩れたぞ!?
 ……と、謙次がそういう状態だということはキュリアも分かったようで、
「……勢いがあまってごめんね、謙次。でも今のを止めたってことは、もう大丈夫なんだよね! この時代に居ていいくらいに、精神を鍛えてきたんだよね!!」
「……ああ。……9年間、待たせてすまなかったな、キュリア」
「いいんだよ! でも、……その、謙次、お願いがあってね……」
 キュリアは、ややほほを赤らめながら、言葉をつむぎます。
「今見てたと思うけど、私、謙次がいなきゃダメみたいなんだ。謙次と一緒に過ごした日々が忘れられなくて、……それでね、それが愛しくてダメになっちゃうんだ。……だから、もし謙次が良かったらさ、……私と、一生を共に過ごしてくれないかな?」
 キュリアの言葉を聞き、謙次は顔を真っ赤にして俯きました。
 ただし、すぐに正面を向き、やさしい顔でこう言います。
「そのために俺は戻ってきたんだ。そのつもりだよ。……だからキュリア、この先ずっと、よろしくな」
 その言葉を聞き、キュリアは感極まり、大泣きしました。
 一度だけ聞いたことのある、キュリアの大泣きの声。
 クオリア障害のせいか、意味不明な言葉とともに、キュリアは涙を流します。
 その声は島中に響き渡り、それに呼応するかのごとく、島中の鳥やモンスターたちが鳴き声を上げます。
 それはまるで、キュリアと謙次の再会を祝福するかの如く……
(作者:……こんな終り方しか思いつかなかったんですが、これでいいよね!)
 ΩND!!!
ΩND


↓ 以下あとがき ↓

続きを読む

キュリアと謙次 よんひゃくさんじゅうよんかいめ!

ケーケー「2011年8月4日。……この日が何の日か、お分かりでしょうか?」
イノブン「は? 知らないけど」
ケーケー「『キュリアと謙次 いっかいめ!』の更新日です」
イノブン「……どうでもいいけど、この小説、始まってからもう6年と8ヶ月になるんだな」
ケーケー「どうでもいいって言わないで……。そして、その小説も、次回で最終回となります」
イノブン「……それがお前の悩みに悩んだエイプリルフールネタか? 面白くも何ともないぞ?」
ケーケー「違うから! 嘘ついたわけじゃなくて、ホントのことだから!!」
イノブン「……でも、お前のことだから『実際書いてみたら、1回分に収まりきりませんでした、てへ☆』って感じになりそう。……と思ったけど、最近お前、次回1回分ストックしてるんだっけ?」
ケーケー「いや、どうせ来週に1回分書けば終わるから、今週はストック書くのサボった」
イノブン「おい。……嫌な予感しかしないぞ。頼むから『やっぱ先週の最終回予告はエイプリルフールってことにさせてください……』なんてオチにしないでくれよな」
ケーケー「大丈夫。仮に3回分の内容になっても、頑張って来週書き終えるから大丈夫」
イノブン「人はそれを大丈夫とは言わない」


<前回のあらすじ>
 元の時代に帰る謙次を見送るために、謙次と縁のある人がキュリアの家の前に集まりました。
 ガイ、マリエル、シーノ、フェニックスが、これから旅立とうとしている謙次に、思い思いの言葉を送っていました。


<本編>
 その他、いろんな人が謙次に声を掛けました、
 最期に、
「謙次、本当に元の時代に帰っちゃうんだよね」
 謙次と縁のある人が集まっている中、キュリアが謙次に言いました。
「あぁ、そうだ」
 謙次が答えました。
「……その、私が謙次の元居た時代についていくのも、ダメなんだよね?」
 悲しそうな表情で、キュリアが尋ねました。
 謙次は答えます。
「あぁ。キュリアがついてきたら精神を鍛えられないだろうから、俺は一生この時代には戻って来れないだろうさ」
 キュリアがこの時代に居られないということは、若返りの呪文『ハイジュ』を使えないということ。今の年齢の倍近く生きることはできますが、己の死を第一に恐れるキュリアにとって、その選択肢は選べないのです。
「キュリア、……悪いけど、もう俺に迷いはない。……9年後、また会おう」
「……そっか。じゃあ、一つ呪文を掛けさせて」
 謙次の言葉を聞き、満面の笑顔を見せるキュリア。
 キュリアはクオリア障害ということもあり、嬉しい場面や悲しい場面での感情が他の人と異なることが多いです。
 今回も、何をもって満面の笑みを見せているのか、……もしかすると、謙次の足かせになるまいと気丈に振舞って作り笑顔をしているだけなのかもしれませんが、この満面の笑顔の意図が分かりません。
 そんなキュリアが謙次の頭に手をかざすと、謙次が光り輝きます。
「えっ!? ちょ!! ……一体何したの!? キュリア!?」
 驚く謙次の手前に、等身大の鏡が置かれます。
 謙次はその鏡で自分の姿を見ると、……全体的に雰囲気が少しだけ幼くなったような感じでした。
 今、キュリアが謙次に掛けた呪文は、若返りの呪文『ハイジュ』。
 謙次がこの世界で過ごした1年分、若返らせることで元居た時代に容姿を気にせず戻ることができます。
 これは言わば、キュリアからの無言の後押し。
 その意図に気付き、謙次は、
「……ありがとな、キュリア。また9年後……」
 そう言い残し、この時代を去りました。

キュリアと謙次 よんひゃくさんじゅうにかいめ!

ケーケー「終わりが近くなってきた、この小説」
イノブン「長かったな。……ここまで読み続けてる人がどれだけ居るか、気になるけど」
ケーケー「多分片手で数えられると思う。それよりイノブン」
イノブン「なんだ?」
ケーケー「来週は小説書いてる暇がないので、お休みします」
イノブン「……お前、もうすぐ終らせるつもりなら、無理してでも更新頑張れよ」
ケーケー「趣味は無理してやるものじゃないよー」
イノブン「……ダメだ、聞く耳持ちやしない」


<前回のあらすじ>
 フェニックスに、二度と未来予知能力の精神支配を受けるなと脅された謙次。
 そんな謙次に、未来予知能力が謙次の未来像を見せます。
 それも、謙次が元居た時代に戻り、高校、大学へと進学し、就職した未来像でした。
 その未来像では、謙次が25歳の誕生日を迎えた際にキュリアのいるこの世界に戻り、未来予知能力を普通に使用し順風満帆な生活を送っていました。
 未来予知能力が送ってきた、謙次の未来像。
 謙次はその意味が気になり、別の未来も予知します。


<本編>
 謙次が元居た時代に戻り、先ほどの未来予知とは違う大学に進学した未来を予知しました。
 すると、謙次は定職に付くことなく9年後この時代に帰ってくることになりますが、すぐ予知能力に精神を支配され世界を破壊しようとします。
(どういう、……ことだ? 進む大学が違うだけで、なぜさっきの予知結果と違うんだ? そもそも、俺が元居た時代に戻らなかったらどうなるんだ?)
 謙次は疑問に持ち、元の時代に帰らなかった未来を予知しました。
 結果、謙次は予知能力に精神支配され、フェニックスに殺されます。
(元居た時代に帰らないと、いずれ予知能力から精神支配を受けるのか。元居た時代では未来予知能力は使えなくなる。だからフェニックスも、元居た時代に帰ったらどうだと提案したのか?)
 謙次は改めて、先ほど未来予知能力が示した謙次の未来像を予知しなおしてみます。
 その未来は最終的な未来像こそ輝かしいものの、それまでの過程は過酷なものでした。
 高校時代は中学までに遅れを取った学業に励むとともに、部でのスポーツ活動を行い肉体を鍛え、アルバイトにより大学に行くための資金を一部稼ぎます。
 大学時代はサークル活動のほか、各種コンクールに応募するなどいろんな活動に取り組み、いろんな経験を身に着けます。
(……これ学生生活を送っているというより、修行してる感じじゃないか?)
 それはいわば、現世での修行。
 今の謙次は精神が未熟すぎて、予知能力からの精神支配に耐えることはできないでしょう。
 それを防ぐため、精神を鍛えるべく元居た時代に戻るのです。
(……これは、迷ってしまったらダメだな。選択肢が無い以上、俺がやるべきことは一つだ)
 謙次は思い立ち、この時代で今までお世話になった人に、テレパシーを送りました。
『みんな、聞いてくれ。実は……』

キュリアと謙次 よんひゃくさんじゅういっかいめ!

ケーケー「この小説も、最終章が終ってそろそろ終わりだな」
友人「え? 最終章が終ったら、真の最終章が待ってるんだろ?」
ケーケー「はい?」


ケーケー「……ということがありまして」
イノブン「お前ならやりそう」


<前回のあらすじ>
「謙次が再び暴走すると、今度こそ世界が破滅に追いやられるかもしれない。だから、謙次には悪いけど、今後は僕かもしくは僕が信用している他の誰かに常に謙次を見張らせておいて、謙次が暴走する兆候が見えたら、暴走する前に僕の手で殺させてもらうよ」
 そう謙次に告げるフェニックス。
「もしそれが怖いなら、元の時代に戻るといい。少し考えてみてくれ」
 そういい残し、フェニックスは部屋から出て行きました。


<本編>
「……この未来予知能力には、結構世話になったんだけどな」
 キュリアと二人、テーブルについて、謙次は言います。
「窮地に追いやられた時、コイツはいつも俺たちを助けてくれた。だから、いいやつだと、……そう、思ってたんだけどな」
「……うん。何度も私の命を助けてもらってたしね」
「……だけど、……俺、どうすればいいんだろうな。……怖いよ」
 謙次は頭を抱えて言います。
「なんなんだよこの能力。間違った使い方したら世界を滅ぼしかねない? ……いらないよそんな能力」
 つらそうに言う謙次。キュリアはそんな謙次をフォローしようとしますが、何も言葉が浮かばないようで、黙っていました。
 すると、謙次の脳裏に突然、あるイメージがよぎりました。
 そのイメージは、謙次の未来予知能力が見せたものでした。
 謙次が自分から能力を使ったわけではありませんが、本来個体能力は発動条件を満たせば発動するもの。未来予知能力の発動条件は良く分かっていませんが、条件を満たして自動で発動したのでしょう。
 未来予知能力が謙次に見せたイメージは、謙次の未来像。
 それも、謙次が元居た時代に戻り、高校、大学へと進学し、就職した未来像でした。
 その未来像では、謙次が25歳の誕生日を迎えた際にキュリアのいるこの世界に戻り、未来予知能力を普通に使用し順風満帆な成果いつを送っていました。
 未来予知能力が送ってきた、謙次の未来像。
 謙次はその意味が気になり、別の未来も予知します。
プロフィール

ケーケー

Author:ケーケー
趣味:自作小説執筆、プログラミング、電子工作
好きなゲーム:ぷよぷよ

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